名前:宮本香奈
居住地:Culver City
経歴:大学卒業とともに同じ大学のサークル仲間だった旦那と結婚。彼は米系ITサービス企業に、私は米系広告代理店に就職し、楽しすぎる”ニッポンのサラリーマン生活”を満喫しながら3年半資金を貯め、2005年に留学生として渡米。最初の一年はドラマ”The OC”に憧れて渡米したこともありオレンジカウンティで暮らす。英語を習得するために通ったカレッジでビジネスとマーケティングを専攻し、アジア人留学生の可能性と現状について考えるようになる。在学中にクラスの課題と絡め「海外で活躍するアジア人女性を応援する」というコンセプトにしたウェブサイトを立ち上げ、2007年9月にフリーマガジンとして紙媒体での出版を開始。会社の一周年を迎える数ヶ月前に娘を出産し、現在はフリーマガジンだけでなく、リサーチ、マーケティング、イベントなどを手がける何でも屋さんに(笑)。
南カリフォルニア暦:9年
お子様の性別と年齢:7歳(女の子)
Q:出産はどこですか?どのように行いましたか?
サンタモニカのセントジョーンズ病院にて自然分娩で出産しました。夕方まで普通に仕事をし、分娩台に上がってから数プッシュでアッサリ産まれたため、先生にも「You are an athlete!」と驚かれる程でした。その日が担当医のお誕生日でもあり「ここ数年で一番easyな出産だったわ」と、先生はそのままご自分のバースデーパーティーに戻って行かれました(笑)。産まれてすぐに看護婦さんに「ハイ、キスして」と子供を差し出されたものの、産声を上げなかったためにそのまま集中治療室のようなところへ逆さ吊りで連れて行かれてしまい、「あれ?今ので私の出産は終わったの?え?」みたいな不思議な感覚になったことを今でもよく覚えています。(幸い喉に何かが詰まっていただけですぐに戻って来ました)予定日のしばらく前から母が来てくれたこともあり、出産は精神的にもとても安定していて、普段離れているからこそ改めて家族の大切さを感じた1日でした。ただ産まれたその日の夜はおっぱいの飲ませ方も分からず、娘は泣き止まず、母はお赤飯を炊くため先に自宅に戻ってしまっていたため、旦那と二人で一睡もできずに、何とも言えない不安な気持ちで途方に暮れて過ごしました。翌日家族三人で家に戻った私たち夫婦を見た母親が「ゾンビのようになっている」と驚いてました(笑)。
Q:お子さんが生まれる前後で、自分の生き方がどのように変わりましたか?
子供が生まれてから、「いい人間(ヒト)」になりたいと思うようになりました(笑)。それまで自分のことを第一優先にしていたのですが、娘を産んでからいつか彼女に「ママみたいになりたい」と思ってもらうことが私の夢に加わり、そう思われるような人間になりたいと思うようになったのです。またとても自分勝手な考え方ですが、私が死んだ後も娘やその子供たちが生きて行く世の中が良いものであって欲しいと、世の中について長いスパンで興味を持つようになりました。でも実は、母親として確かな実感を持てるようになったのは(大変遅いのですが!)子供がキンダーガーデンに入ってからでした。それまでの人生でも結婚、就職、渡米、起業、出産などいくつかのターニングポイントがあり、もちろんその都度小さな変化はありました。ただそれでも大きく変わるということはなく「結局のところ自分は自分」という思いが強かったのですが、子供がキンダーに入った年に生活や環境がガラリと変わり、自分が新しくなるという感覚がありました。娘が「家族の中にいる私たち夫婦の子供」というだけでなく、米国の幼稚園生としてアメリカ社会に入って行ったおかげで、私もたくさんのことを学ぶことができ、ようやく色々な意味で「アメリカ人としての母親」になった感覚があったのです。ファッションや好みもようやく母親らしくなり、「子供と学ぶ」という環境が自分を成長させてくれた気がします。
Q:子育てポリシーを教えて下さい。
子供にはいつも笑顔でいることと、お友達を大切にすることを教えています。私も主人も日本で生まれ育ち日本の教育を受けてるので、受験や学力社会も経験しましたが、娘には成績の良い子よりお友達の多い子になって欲しいと願っています。そしていつも笑顔で挨拶をきちんとすること。私が尊敬している先輩の子育てから学んだのですが、笑顔には家族をハッピーにするものすごいパワーがあります。例えば娘が何かに怒り出したら「怒ってもいいよ。でも同じことを口角を上げて言ってごらん。」と教えています。すると本人は自分でも笑ってしまい、怒っていたことがたいしたことないことだったと思うのか、すぐにケロッと笑顔になっています。ただ眠かったり甘えたいだけで泣いたりする時は、平日は離れていて甘える時間が足りていないという思いがあるので「いいよー!思いっきりおいでー!!」と伝えています。そうは言っても私も主人も仕事で疲れてイライラしているような時に「遊んで遊んで」攻撃が来ると大変なこともあります。 数字好きの主人が計算したのですが、例えば子供が「遊んで遊んで」とせがんで親を困らせるような時期が 5年間だとして、人生80年で計算するとそれは人生のうちの6%ほどしかない貴重な時間と言えます。さらに娘は既に7歳なのでもう1%も残っていないことになるのです。そのため例えば娘が私に「遊んでー」とせがんでいるのに私が余裕のない対応をしている時は主人に「1%だぞ」と突っ込まれ(笑)、逆に主人が娘にイライラした対応をしている時は「あーぁ、もう1%しか残ってないのにー」とか突っ込んだりしています。同じ考え方で、当たり前ですが子供が”今”の状態でいてくれるのは今だけ。できる限り大切に時間を過ごしたいなと思っています。
Q:お子さんは学校に行かれていますか?いつからデイケア/プリスクールに行き始めましたか?
産まれた直後は私の母が数ヶ月ヘルプに来てくれていて、バトンタッチして主人の母がやはり数ヶ月滞在してくれました。私は会社の立ち上げで最も忙しく、先の読めない時期でもあり、出産翌日から外せないミーティングが入っているような状態でした。あの時期に二人の母がいてくれなかったらとても乗り越えられなかったと思います。その後はデイケア探しに奔走したのですが、奇跡的に日系人の方が経営するアットホームなデイケアが見つかりました。当時唯一の日本人ベイビーだったということもあり、とてもかわいがって頂き、LAの”おばぁちゃん”になってくれました。出張の時は泊めてくれたり、学校の送り迎えや習い事の送り迎えをしてくれたり、私たち夫婦にとってはLAの実家。つまりは私の母でもあるので、スカートが短いと怒られたり(笑)、かけがえのない存在です。学校はキンダーから現地の学校に通っています。プリスクールにも行かず、両親が日本語のため言葉のハンデもあり、さらに7月生まれのためクラスでは最年少なのですが、キンダー1年目からクラスの中で活躍して頑張る姿には本当に刺激を受けました。その学校に入るためにCulver Cityに引っ越して来た価値があったと思える素晴らしい学校で、先生にも友人にも、そしてママ友にも恵まれています。
Q:仕事と子育てを両立していて良かったというエピソードは何ですか?また大変だったエピソードは何ですか?
実は「両立」という言葉を使わないようにしていて(「両立」という言葉に、勉強と部活や、仕事と家事など、”やらなくてはならないものをやる”というようなイメージがあるため)どちらも楽しんでやっています。仕事は自分で始めたことなので、私にとってはある意味長女であり、こちらも手をかけて育てていきたい存在です。どちらが欠けても今の自分はないので、長女と次女を同じように可愛がるママと同様、両方があってこそだと思っています。大変だったというのとは少し違いますが、娘がまだ0歳の頃に雑誌で「Mom&Me」のコーナーが始まり、ママとキッズのお揃いのファッションや子育て話などの取材をする機会がありました。月齢の近いベイビーたちを取材していると、自分もたまらなく娘に会いたくなり「私は一体何に向かっているんだろう」と帰りの車で号泣したという思い出があります。
Q:バイリンガルになるように何か特別にされていることはありますか?
Culver CityにはDual Language Immersion (DLI) と呼ばれる二ヶ国語で義務教育を学ぶプログラムがあり、日本語のImmersionを公立で行っている学校があります。当初私はその学校に娘を入れたいと思っており、主人は同じ学区にある同じくスコアが10/10の現地校に入れたいと考えていました。娘もその学校を受験したのですが、日本語力が足りず、また英語脳であると診断され、入学することができませんでした。その経験から(これもまた人より遅いのですが!)日本語教育について真剣に考えるようになりました。それまで娘が英語で話しかけて来る時は、嬉しくて英語で対応してしまったり、日本人の両親である以上日本語はできるし、アメリカにいるんだから英語は心配なく、自動的にバイリンガルになるだろうなどと甘く考えていました。でもその学校に入れなかったことで「バイリンガル」とは自然になるものではないという当たり前のことに気がつくことができ、また今通っている(最初から主人が入れたかった)素晴らしい学校に入ることができました。Culver Cityはとても親日で(貝塚市の姉妹都市)、図書館に日本庭園があったり、街や学校で”Japan Day”があったりするのですが、娘が通う学校には日本人の方はほとんど前述の学校に受かるため(!)、日本人が彼女しかおらず、とても可愛がってもらっています。クラスの子達が日本について興味を持ってくれたり、言葉を教えてと言ってくれたりするので、日本人としての誇りも持てるのかなと感じており、語学だけよりもっと深い意味での”バイリンガル”に育って欲しいと思っています。また土曜日に日本語補習校の「あさひ学園」に通わせていますが、これも語学という意味合いよりは日本の文化や習慣、日本人としての考え方を知ってもらいたいという気持ちが強いです。ただもちろん補習校には国語の授業もあるので、あさひ学園に通わせていることが、結果「バイリンガルに育てる」ことにも繋がっていると思います。
Q:今はまっている事は何ですか?
子供の学校のボランティアです。アメリカは日本より親の学校への関わりが深いと感じます。娘の学校は親の意識が高く、人気のボランティアは争奪戦なのですが(笑)、時間の都合がつく限り参加するようにしています。アートのクラスなどでは、ヘルパーとしてボランティアに参加しても、ほとんど副担任のような動きを求められ、自分もとても勉強になります。また子供の学校生活を近くで見られる貴重な体験だとも感じ、元々小さい子供達と遊ぶのが好きということもありすっかりハマってしまいました。また3年ほど前からゴルフにもハマっていて、仕事にも役立っている気がします。接待という意味ではなく、自分の弱点がスコアにもハッキリ表れるスポーツなので、今までやって来たスポーツとは全く異なり、「思った通りに行かないことが悔しくてやめられない」というタチの悪い恋愛のような状況です(笑)。娘は3歳からバレエを続けているのですが、最近ゴルフも始め、バレエは一緒にできそうにないですがゴルフなら!と今から楽しみにしています。
Q:起業家として、事業をしていくことと、子育てに何か共通点はあると感じますか?
前述にもありますが、手をかけて育てるという意味では似ていると思います。またどちらも今の自分が反映される存在なので、気づきも多いです。ただ仕事は自分がやったことが数字などの成績で返ってくるのに対し、子育ては何をもって成果とするのか分かりづらいのでそこは全く違うと思います。私は「起業したい」という思いが昔からあったわけではなく、”向き不向き”で言ったら全く向いていませんが、起業してすぐの頃先輩に「向き不向きより前向き」と教わり、前向きでいることを心がけて来たので、その考え方は子育てにも通じているのかなと思います。
Q:お子さんをつれて行くオススメスポット、一緒にするアクティビティーを教えて下さい。
子供とは基本的に一緒にいるだけでどこで何をしていても楽しいのですが(平日は一緒にいられないため週末や夜の時間がとても貴重なのです)、一緒に旅行を楽しめる歳になって来たので小旅行に出かけるのが好きです。サンディエゴやパームスプリングス、もっと近いとオレンジカウンティやパサディナなどの近所でも、ホテルで一泊して時間を過ごすだけでとても幸せな思い出深い週末になります。この夏休みはクルーズでメキシコに出かけたのですが、そのホスピタリティと価格の安さに驚きました。小さな子供が楽しめるアクティビティもたくさんあって、3泊のプランからあるのでおすすめです!一緒にするアクティビティーで一番のおすすめはお料理です。女の子なので興味も強く、色々お話しながら一緒に作るのが楽しく、特にお菓子作りはオーブンで焼き上がるまでの待ち時間も一緒にワクワク楽しめます。娘は3歳くらいからパンケーキを混ぜる担当だったりして、クッキーの型抜きやおにぎり作りなどは幼い頃はぐちゃぐちゃなものが出来上がりますが、それも良い思い出になります。
Q:今後の夢は何ですか?
いつも自分が人にしている質問なのですが、されると何と答えていいか困るものなのですね(笑)。まず自分の会社については、大きくしたいというより強くしたいと思っており、自分で始めたことなので長く続くものでありたいと思っています。また40代が視野に入って来たので、下の代に伝えたいことを伝えて行く責任があるとも感じており、最近ではファッション&ビジネススクールの講師をしたり、大学のキャリアフォーラムで話をしたりといった、以前は受けなかったような仕事も受けるようになりました。また私にとって世界一住みたい場所は南カリフォルニアですが、日本のことは変わらず大好きなので、その大好きな二つの国を繋げるプロジェクトを進行中で、それを形にすることが目標です。そして人生の夢は娘に「ママみたいになりたい」と思ってもらえる人間になることです。
【インタビューを終えて】
ロサンゼルスで女性に根強い人気を持つフリーマガジンJPyの創立者の香奈さん。娘さんも事業も手をかけて育てたい大切な存在と語る彼女、なんと会社の立ち上げと出産が同時期だったそうなのですが、「大変なことは一気にした方がいい」という先輩の言葉を信じて乗り越えてきたエピソードはさすが!!と感嘆しました。周りの人をハッピーにさせる眩しい笑顔、そしてポジティブな言葉で経験や自分の考えを惜しみなく語ってくれる彼女の魅力に虜になってしまいました。インタビューの中に名言が多々ありましたが、その中でも、子どもが「ママ遊んでーー」と甘えてくるのは、人生のたったの6%。こうやって数字で見てみるとリアルに、まさに子育てが大変だと思う時でも、これは人生の中で一瞬の宝物のような時間なんだということに気づかされ、子どもに向き合って今を楽しもう!と思わせてくれるのでは?MAMA Talk 20回記念に、素晴らしいインタビューをさせて頂けたことを心から感謝しています。ご協力本当に有り難うございました!