名前 :まちむら尚美
居住地:Santa Ana
経歴:
千葉県出身。一年間のスペイン留学を経て、2003年7月に渡米。2007年からカリフォルニア州認定鍼灸師として、2014年から心書家として、ロサンゼルス、オレンジカウンティーを中心に活動中。
お子様の年齢:3歳4ヶ月(女の子)、8ヶ月(男の子)
南カリフォルニア暦:12年
Q:一人目は病院での出産、二人目は自宅出産を選んだ理由は何ですか?
1回目自然で産んだ時、できるだけ家で陣痛に耐えてからギリギリで病院に搬送されたので、その時が一番苦しかった思い出があります。なので、できるなら自宅でできるだけリラックスした状態で産みたいと思いました。また、娘に出産の様子を見せたかったこと。家族に見守られて産みたいと思ったこと、また、助けてくれる身内がいなかったので、私が病院にいる間、娘を見てくれる人がいなかったので、入院を避けたかったのです。
Q:両方経験した結果、どちらがどのように尚美さんにとっては良かったと思いましたか?
病院で産んだ時は病院で出生届などの法的な書類作業が全てやってくれたので、楽でした。自宅出産は、出産時に家族や親しい友達に見守られて産めたことは、今でもとてもいい思い出になっています。でも、すべて自分たちで用意&片付けをする点で手間があります。また法的な書類作業は産後の忙しさもあり、なかなか進みませんでした。
Q:鍼灸は妊娠しやすい体を作るのにどのように役立ちますか?
妊活中に一番大切なことは「リラックス」すること。鍼灸は心も身体もリラックスするのを促してくれます。そういう意味で、全ての妊活中の方にお勧めです。とは言えとくにお勧めしたいのは、
1)生理のサイクルが乱れている方や痛みのある方。当然ですが、生理不順の方は妊娠計画が立てづらいですよね。またなによりも妊娠するまでに身体のバランスを整えておく。そういう意味で、痛みや不順を改善するのに、鍼治療はとても効果があります。
2)IVF(人工授精)をされている方。興味深いリサーチがあり、受精卵を注入する前後に鍼灸をしたグループは成功率が42%、対してしなかったグループは26%にとどまったという結果が出ています。子宮、卵巣、卵管内の血流が良くなったり、女性がリラックスすることで、着床率が高まるのかもしれません。そういう点で、IVF中の鍼灸はとても効果があります。
Q:妊娠中の方に鍼灸することで具体的にどのような効果がありますか?
自分の体験と、お産のプロであるDoula さんの経験から、妊娠中に鍼灸を定期的に受けている方はとにかくお産が早くてスムーズです。鍼灸を受けることで、子宮収縮がスムーズになり、骨盤が開きやすいのだろうと思われます。とくに37周目以降は積極的に、毎週1回のペースで受けるようお勧めしています。
Q:リスクはありませんか?
37周目以降はとくにありません。それ以前は子宮収縮を促すツボを避ければ、全く問題ありません。必ず施術師に自分が妊娠中である、あるいはその可能性があることを、施術前に伝えてください。
Q:産後にママがよく直面する問題はなんですか?
産後はとかく、いろんな不定愁訴に悩まされます。身体的には、腰痛、肩こり、背中痛、会陰痛、痔、おっぱいの痛み、おっぱいが出ない、などなど。それ以外では不眠、そしてホルモンのアンバランスによる精神の不安定、心配、不安、鬱、悲しみ、怒りなど。身体的な不調よりも、精神的な不安定の方がむしろ深刻かもしれません。
Q:それを鍼灸することでどのような効果がありますか?
身体的な問題は、産後の疲れや貧血、慣れない授乳によるものです。お灸、鍼、漢方、マッサージで早めにケアをすることで、ほとんどの不調を、薬を使わずに素早く直すことができます。とくに、母乳育児をしているお母さんにとってお薬はできるだけ避けたいですからね。何よりも、1日も早いママの体力回復が、赤ちゃんの健康促進につながります。例えば、産後のママによくありがちな痔などは、たった1~2回の鍼治療で軽減します。おっぱい痛なども、鍼と灸で血行を良くすると、流れがよくなり、おっぱいが出やすくなりますよ。もっと心配なのは、実は精神的な不調です。産後のママは、赤ちゃんが生まれて幸せなはずなのに、なぜか孤独なんです。それは、ホルモンのアンバランスによるもので、当然起こるものだということをまずは全ての方に知ってほしいです。妊婦さんはもちろん、その家族、お友達も含めて。目に見えないホルモンのバランスを、鍼灸は身体に無理なく、優しく、素早く正常な状態に戻してくれます。
Q:今まで、ご自身が一番鍼灸の威力を感じたエピソードを教えて下さい。
あまりにもたくさんあるので、一つを選ぶことは難しいのですが、
①一人目の出産時の陣痛中に、三陰交に自分で針を入れた瞬間、破水をしたこと。
②偏頭痛がひどい時、歯痛がひどい時、合谷に針を入れた瞬間に痛みが消えた。
③妊娠中に痔がひどくなった時、手首と内ひじの間3分の一のところに針を入れる施術を2回しただけで、痔が治った。
Q:自分らしく人生を生きていけるように、という思いで、鍼灸師としても心書家としても活動しておられるとのことに、素晴らしいと思いました。尚美さんの<自分らしい人生>って何ですしょうか?
「自分の魂が喜ぶことを思いっきりすること」です。そうは言っても、「自分らしくないな」と思う時もあります。周りに流されそうになったり、人の目が気になったり、落ち込むこともよくあります。そんな時は、次の質問を自分に投げかけています。
1、ワクワクしている?
2、そこに愛があるか?
3、本当にそれが好き?
私にとって、人生のテーマはこれ。
1、「Passion」
2、 「Love」
3、「Joy」
この3つがどこかにあれば、私は私らしく生きていると、胸を張って言えるでしょう。
Q:アメリカで日本人として生きていく中で、特別に大切にしていてお子さん達にも伝えていきたいことはありますか?
このアメリカで日本人として生きて行く上で意識していることは、「日本人であることを忘れない」こと。日本語、日本の文化、歴史など、離れてみて初めてよく見えてきた自分の国には、誇るべきこと、残したいこと、伝えたいことが、沢山あります。一番子供達に伝えたいのは、「人」。アメリカにいながらにして、こうして不自由を感じることなく暮らせているのはやはり、日本人コミュニティの手厚さ。時に煩わしくなる人間関係もありますが、それでもどれほど、同じ日本人の皆様に助けられてきたことでしょう。日本を出るまでは、私は人が嫌いで、自分も嫌いだった。しかし、日本を出てから、本当の意味で、人の温かみを感じることができ、そして、同じルーツを持つ日本の人々の優しさに、何度となく救われてきました。もし日本に居たままだったら、ここまで深い人間関係を持つことはなかったでしょう。子供達には、日本人の血が流れているという誇りを持ってほしい。そして、日本人特有の、「思いやりや真心」というものを生活を通して肌で感じるように育てたいです。そして、それを身につけてくれればいいなと思います。
Q:自分らしい子育てって何ですか?子育てで大切にしていることは何ですか?
正直でいること。自分が間違ったと思ったら、娘や息子に対しすぐに謝るようにしています。一人でいたい時は、一人の時間がほしいと伝え、母親である前に一人の人間であるということを、子供達にも伝えています。
Q:お子さんがバイリンガルになるように特別していることはありますか?
英語は家では話さないようにしています。日本語のプリスクールに通わせて、私とは日本語で会話をしています。父親とは父親の言葉(スペイン語)で話し、父親の家族とは毎週電話で話すようにしています。
Q:お子さんはデイケア/プリスクールにはいっておられますか?(いつから行っていますか?)
日本のプリスクールに2歳から通っています。
Q:助産婦さんが色々教えてくれたとビデオにありましたが、妊娠待ちの方に効果的な飲み物/食べ物って何ですか?
妊活中の方は、まず添加物、薬、アルコール、カフェインを避けるようにアドバイスします。そして、できるだけオーガニックの食生活、昔ながらの和食を心がけること。体と子宮を温めるために、色の濃い食べ物(ゴマ、きくらげ、ひじき、黒豆、小豆、ごぼうなど)を食べ、ディトックウスを促すために、毎朝、オーガニック野菜のスムージーやジュースを飲むといいと思います。
Q:今後の夢は何ですか?
沢山あります 笑。まずは心書家として、古巣スペインのバルセロナかマドリッドのマジョール広場で路上書き下ろしをすること。鍼灸師としては、貧しいスペイン語圏(まずは主人の故郷であるコロンビアかな)あるいは被災地で、耳鍼のボランティアをすること。母としては、そういった私の活動を子供達に見せること。ワクワクしながら活動をし、愛をもって人と接している姿を、家族には見てほしい。最終的な夢は、自然に囲まれた場所でリトリートセンターを作ること。温泉があって、オーガニック農園があって、そこで撮った食材を使った食事を出すリトリートセンターでは、断食道場あり、鍼灸治療院あり、お産をして、産前産後を過ごす場所がある。心と体を癒すために、世界中の人が集まりに来るような場所を作りたいです。
【インタビューを終えて】
華やかな笑顔と落ち着いた話し方で、話しているだけで相手の心をゆったりさせてくれ、物事の本質を優しく語ってくれる尚美さん。仕事でもプライベートでも「目の前の人を心から大切にしたい」という彼女の思いは話しているだけで伝わってきました。鍼灸は、妊活中の方、妊娠中の方、産後のケアにとても効果があるという事がお分かり頂けたかなと思います。私自身も、もっと早く出会えていれば是非出産前後に治療を受けたかった!と思いました。こういう情報を持っているかどうかで、女性の選択肢はぐんと広がるように思います。自分の望む生き方や子育てをと考えてLALAMAMAの活動をしていますが、実は出産の時から自分らしい選択は始まっているんですね。鍼灸師としても心書家としても、沢山の人達を癒していく活動をこれからも楽しみにしています。ご協力本当に有り難うございました!