今回も「子どもの力を感じた場面」について紹介します。
保育園では子どもが他の子や大人の姿を「見る」ことを大事にしています。この「見る」ことはとても大事で、見ることで刺激を受け、そこから真似をすることで遊びが発展していき、その中で多くのことを学んでいくからです。子どもの真似でよく知られているのが「ごっこ遊び」で、その代表がままごと遊びです。家庭で行われている食事の準備や掃除などを、子どもたちは遊びとしてよく行っています。そしてままごと遊びが発展していくと、今度は家庭外で目にしている様々な仕事を真似し始めます。パン屋さんであったり、美容院であったり、レストランであったり。その様子を見ていると、子どもたちの世界が家庭から社会へと少しずつ広がっていることを感じます。
また、真似をすることで共感する力も育っていきます。他者の動きを見て真似するということは、自分の心と他者の心を重ね合わせることでもあります。それによって、他者が何を考えているのか、何を意図しているのかを読み取っていくわけです。例えば大人が赤ちゃんにミルクをあげている様子を見ることで、お腹のすいた赤ちゃんのための行動であることを知っていきますし、泣いている子どもの涙を拭いてあげている様子を見ることで、大人がその子の気持ちに受け止めようとしていることを感じ取っていきます。そして、自分が同じような場面に出くわしたときに、大人がしていたことと同じ行動をとるようになっていきます。
写真はある日のおやつの時間の様子です。すでに席についていた1歳11ヶ月のIくんの側に、1歳10ヶ月のYくんが泣きながらやってきました。なかなか泣き止まずにいるYくんの様子をじっと見ているIくん。保育士がIくんにティッシュを渡したところ、そのティッシュでYくんの涙を拭いてあげました。保育士が「Yくんの涙を拭いてあげて」と頼んだわけではなく、Iくんが自分で行動した場面です。こうした行動が保育園ではよく見られます。
他者の気持ちに共感することは、社会の中で他者と協力して生きていくために欠かすことのできない力です。その力をつけていくためにも、多くの様々な他者を見て真似することのできる環境は大切です。大人や上の子の様子を見て、それを下の子や近い年齢の子に対して再現することのできる、大人や様々な発達段階の子どもがたくさんいる保育園という環境は、少子時代の今、ますます重要な場になってくるでしょう。