【小さなヒント002】うちの子は偏食!食べたがらない!どう対応したらいいの?

今回の質問は「偏食や食べない子に対してどう対応したらいいか」です。食は身体をつくる大切な営みで、だからこそ悩んでいる人も多いんで しょうね。この悩みに対して「こうすれば全て解決します!」といった明快な答えなんてありません。もしあるのなら、このことで悩んでいる人なんていないはずです。ということで、楽な気持ちで読んでもらえればと思います。

偏食や食べないことについて考えるために、まず子どもの食の特徴に触れ てみたいと思います。子どもは本来食に対してとても積極的です。赤ちゃんの時はお腹がすくとそれを泣いて訴えてきますし、離乳食を食べ始めた子が思わず手 づかみで食べたりするのも食に対する意欲の表れです。そして自分がどれだけ食べる必要があるか、その量も知っています。最も特徴的なのが母乳です。母乳を与える際、今回は100ml与えようとか考えて飲ませている人はいませんよね。どれだけの量を飲んだかなんて、母乳の場合はわかりません。赤ちゃんはお腹がいっぱいになったら飲むのを止めます。その量がその子にとっての適量なんです。たくさん飲む子、あまり飲まない子の体重の増加を調べた研究があり、その 結果どちらの子の体重の増加もほとんど変わらなかったようです。摂取したものからどれだけの栄養を身体の成長に使うかは、子どもによって違っていることが わかります。たくさん飲むから安心、少ししか食べないから心配、と考えるのではなく、身長や体重の成長と合わせて見ることも必要なんですね。

そ して、子どもは何を食べるべきかも知っています。子どもは様々な活動を通して身体を成長させていくために、穀物、じゃがいも、トウモロコシといった炭水化物からカロリーをとることを優先させています。その反対にカロリーの少ない緑色の強い野菜、例えばピーマンとか積極的には食べない傾向があります。もちろん個人差はありますが、概ねこのような傾向です。大人はいろんな色の野菜や様々な食材を使った見た目の楽しさとかも求めますが、これはあくまでも大人の特 徴です。子どもの食は身体を成長させることが優先です。わさびや生姜などの薬味が変化を楽しむのも大人だけで、子どもは食べませんよね。いろんな種類の野菜を食べないのは決して好き嫌いではなく、単にそのときの優先度が低いだけです。子どもの頃は嫌いでしかたなかった野菜がだんだんと食べられるようになっ たという経験は、誰にでもあるんじゃないでしょうか。

子どもは食に対して積極的、食べる量も知っている、何を食べるべきかも知っていると書いてきました。では全て子どもに任せておけばいいかというと、決してそうではありません。今は食べないけれど、それを食べる大人の姿を見せてあげること も大切です。大人が美味しそうに食べている姿はちゃんと記憶に残りますし、食べているのを見て「ちょっと食べてみようかな」と思うのも子どもの特徴です。 また、家では食べないけど友だち同士で食べる時には何故かいろんなものをよく食べる、ということもあります。周りの人からの刺激も食には必要です。

食は単に身体の栄養を摂るだけのものではありません。もしそうであればサプリメントだけでもいいということになってしまいます。でもそんなものではないですよね。食は誰とどんな環境で食べるかも大事な要素です。それらを全部含めて考えなければいけないと思っています。そしてぜひ長いスパンで考えてほしいことでもあります。「今」ばかりが気になって無理に食べさせるようとすれば、そのことによって結果的に大人になっても嫌いなものを作ってしまうことになりかね ません。昔無理やり食べさせられていた経験から、今でも野菜が嫌いとか牛乳が嫌いと話す人は、私の周りにも結構たくさんいます。

そして 「食べることの楽しさ」を伝えてあげてほしいと思います。そのためにも、例えばあまり食べない子にたくさん食べることを勧めるのではなく、ほんの少しの量 から始めて「食べ切った」経験を重ねさせてあげるとか。全部食べ切った!という経験は、次の食への意欲につながります。「食べたい!」という意欲をじっく り時間をかけて育てていけば、食の悩みよりも食の楽しさの方が増えていくんじゃないでしょうか。

「木を見て森を見ず(can't see the wood for the trees)」これは「物事の一部分や細部に気を取られて、全体を見失うこと。」という意味です。親であれば子どもの今が気になるのも当然のこと、細かなことが気になるのも当然のことです。でも子育てにおいては「子どもの人生全体を考える」広い視野を持つ時間も必要だと思います。難しいことかもしれませんが、いろんな人の力を借りたりしながら“豊かな森”作りを目指したいですね。